兆春塗

 「兆春塗」は日本産の良質の漆と純金箔を張り、塗り・研ぎ出しから呂色仕上げまで数十回の工程を繰り返して仕上げる、折笠兆春独自の漆芸技法であり、その独特の手法は他の漆塗とは一線を画しています。

 金箔や貝、色の異なる漆を使うことにより生まれる模様には、木目のような自然美が宿ります。


呂色仕上げとは…

 漆を重ねては研磨する仕上げの方法。高い技能が求められ、完成までに長い時間を要します。

 そのため漆器の中でも呂色仕上げの作品は高級品とされます。

漆の特徴は、使っているうちに、使っている人の肌に合うようになってくることです。

触れてみると、赤ちゃんの肌のように柔らかいですね。この漆の肌が自分の脳に染み付いて、『ああ、こ

れは温かいんだな』と感じられます。このような作品や技術は、やはり長く人々に愛され、必要とされ、そして歴史の中で残っていくのだと思います。しかも、使ううちにどんどんツヤが出てくるんです。茶托も長く使ったものは、また味わいが出てきます。使えば使うほど味わいが出てきて、その人に合うようになっていくのです。」

(「採用と教育研究所」発行「YELL Vol.16」より抜粋)


乾漆

 乾漆技法は、奈良の興福寺にある国宝で重要文化財でもある「阿修羅像」が有名です。

 技法は、まず、事前にデザイン画を描いたり、発泡スチロールで形を作ったりして、実際の大きさ、形に手を加えたりしたあと、粘土で形を作ります。

 その上に麻布を1枚貼り、そして乾かし、また1枚貼って、乾かし…という作業を15回~20回ほど繰り返します。

 乾ききったら粘土を壊し、漆下地を5、6回重ね、さらに漆を15回から30回塗り重ねた後に、研ぎ出し、磨き上げをします。これらの工程の間に、金粉や卵の殻、青貝、プラチナなどを漆の表面に貼ったり、置いたりし、またさらに漆を重ね塗りして研ぎ出し、磨き上げる、という工程が入ることも。

 一つの作品が完成するまでには、最低でも1年から3年、長いものではもっとかかります。特に展覧会に出品する予定の作品は、形が決まるまでに半年位かかるのが通常。


 もう一つ繊細な作業が、研ぎ出しと、磨き上げ。独特の柔らかな光沢を出す最後の仕上げの作業で、最低でも2ヶ月ぐらいの時間をかけます。 この作業は、重ね塗りしたものを磨きながら削っていく工程。漆が塗り上がった状態で、表面を耐

水ペーパーや、朴(ほお)の木の炭「朴炭」、椿の木の炭「椿炭」「消炭」などで、丁寧に研ぎ出していきます。そのうちに中の色が出てきます。研ぎ出すうちに金箔が表に出てきて、金や赤のマーブル模様、自然が描き出す美しい墨流し模様や、まだらの流し絵模様が鮮やかに描き出されてきます。

 「一つ一つの工程を手作業で、色や感触を確かめながら進めていきます。最近は大量生産するために、機械で仕上げしたものが出回っていますが、そのような製品ではこうした艶(つや)は出てきませんし、使っているうちに艶が消えてしまうものもあります。ですが、私の作品は、使っているうちにどんどん艶が出てくるのが特徴です。」

(「採用と教育研究所」発行「YELL Vol.16」より抜粋)


木芯乾漆

 木芯乾漆木地職人の制作した木地に下地を施し、漆を18 回程塗り重ねます。

 研ぎ出し、呂色磨きを行い、制作には10 カ月~1年を要します。